たつの・赤トンボを増やそう会について
これまでの活動の概要
まず初めは「実態調査」から-
笂オ当会はH20年(2008年)から活動を開始し、”求む、アキアカネ情報!”のチラシを作成し、市内公共施設に設置したり、JR本竜野や市庁舎前で直接市民の方々に配布して、ご協力をお願いしました。
② 情報が入るとすぐに現地に行って同定しましたが、ほとんどが、他の赤トンボ(マユタテアカネ、コノシメトンボ等)でした。
③ 結局、たつの市内で確認出来たアキアカネの数は、H20年12匹、H21年27匹、H22年10匹、H23年19匹と大変少ない状況でした。
ならば”人工飼育するしかない!”と決意- 笂オ アキアカネが大変少ないなかで、”彼らをどうして増やすか"を思案した結果、”彼らを人工飼育で育ててみるしかない”と決意しました。
② H23年に初めて人工羽化に成功した後、当会の実験施設のトンボ池や地元の農家のご協力で、実際の田んぼで羽化実験に取組みました。
③取組みの初期では、実験に使う卵をどうして確保するか悩みました。また田んぼでの実験では、オタマジャクシ等の天敵の問題等も発生しました。
筐ンチに、アキアカネが激減したのは稲の田植え前に施用する”殺虫剤”が主原因だと、ある著名な学者が指摘されていましたので、”田植え時の農薬(殺虫殺菌剤)の影響”を調べる為の飼育カゴも改善を重ねました。
⑤その結果、H24年からR3年までの10年間で、累計2,547匹の羽化に成功し、その内ある農薬では626匹が羽化しました。つまり、アキアカネが羽化し得る農薬を特定しました。
なお、なぜ10年もかけたかと言いますと、一旦駆逐した病害虫が再び強くなってよみがえる、いわゆる”耐性”が出ないかを確認していたからです。
”たつの赤とんぼ米”の開発- 笂オ当会の考え方は、”アキアカネと人間との共生”です。つまり、アキアカネだけが良かったら良いわけでなく、また人間だけが良かったら良いのではありません。双方にとって良くなることが大切であると考えています。
②かねてより、農家は高齢化と担い手不足の問題を抱えている中で、私たちは農家の負荷を極力増やさないことを意識し、アキアカネの復活に協力してもらえるよう、お米のブランド化に挑戦しました。いわゆる”アキアカネが羽化出来る農法”を実践して頂きました。
③たつの市や兵庫県や地元の農家等のご支援により、たつの赤とんぼ米はお陰様で”甘みとモッチリ感抜群!”と好評で、毎年約3トン弱を販売するようになりましたが、高齢化等で後継者が見つからず、残念ながら本年3月で事業を終了せざるを得ませんでした。
自然産卵と自然羽化について- アキアカネが産卵している場面をよく観察すると、彼らは田んぼに出来た浅い水たまりに産卵しています。そこで、H30年(2018年)秋に当会のトンボ池に4m×5mの浅い水たまりを作って彼らをおびき寄せて産卵させることが出来ました。しかしその翌年(2019年)はその水たまりはモグラが穴を掘った為に水が抜けて乾いてしまい、羽化させるのは失敗しました。
②そこで、その水たまりに防水シートを敷き直してリベンジ。その翌年(2020年)は多数羽化させることが出来ました。特にR4年(2022年)はアキアカネが427匹羽化したのには大変驚きました。
③たつの市内ではアキアカネがほとんど見られないのですが、このような浅い水たまりを作ると、どこからともなくアキアカネのツガイがやってきて産卵するので、他の地域に住んでおられる皆さんの場所でも浅い水たまりを作って、一度ぜひ試して頂きたいと思います。
農薬実験後の方針転換について-
笂オ上記2と3までは、いわばアキアカネが減少した主原因、つまり彼らを激減させたマイナス要因に対処する為の実験でした。
②果たしてそれが実施されたら、それだけで本当に彼らは復活するのだろうか?R3年3月に今後の方向性についていろいろ考えました。
③今の田んぼは、昔と違って生き物がほとんどいない感じがしていました。昔は田植えの時期になるとドジョウや小ブナなどの生き物が沢山いました。つまり彼らがいたということは、彼らのエサとなるものが豊富にあったからだと思います。
筐ヨ齦禔A田んぼの水たまりに産みつけられたアキアカネの卵をより多く羽化させるには、現状ではヤゴのエサになるものが足りないかもしれない、と考えるようになりました。
⑤そこで、エサになる小さな水生生物等を多く発生させる仕組みを作るべきではないか。今までのような、マイナス要因に対処する為の農薬の実験だけでなく、今後は彼らにとってプラス要因となるエサを増やすことも検討しよう、ということになりました。
自家製堆肥による実験について-
笂オ実はH31年(2019年)から一部の田んぼの飼育カゴでは、人工飼育の時にミジンコを供給していたのをやめて、鶏糞の自家製堆肥のみで羽化させることを試していました。
②鶏糞堆肥での羽化数は5匹程度で、水の中を調べるとミジンコがいました。
③その翌年は、東京農工大の方から”一度馬糞を試してはどうか?”という提案があり、同大学から馬糞を送って頂き、早速翌年同様の実験を行ないました。
筐モq3年度の個別目標として、自家製馬糞堆肥で30匹羽化させることを目標にしていましたが、 結果は38匹の羽化に成功しました。そして、水の中を調べるとミドリムシ(ユーグレナ)がいたのです。
⑤さらに、顕微鏡のプレパラートの上でアキアカネの卵を孵化させ、生まれたてのヤゴが本当に ミドリムシを食べるかどうかを観察したら、口をもぐもぐさせて食べた場面を何度も動画で撮影 することが出来ました。
馬糞堆肥の有効性と将来性-
笂オR4年と5年は馬糞堆肥を使って重要な実験が出来ました。1つ目は、自家製牛糞堆肥との比較実験で、ミドリムシは牛糞ではほとんど増殖しないが、馬糞では多く増殖するということです。
②2つ目は、生まれたてのヤゴを入れた自家製馬糞堆肥溶液に自家培養したミドリムシを付加したら、通常通り約2カ月後に羽化しました。つまり、ミジンコなどの比較的大きいエサでなくても羽化したということです。
③このようなことから、前述の5の”エサになる小さな水生生物等を多く発生させる仕組み”を作ることについては、半歩前進したように思います。
筐モワた、今年はミドリムシだけでなく、マコモ畑での自家製馬糞堆肥投与の実験では、ウチワヒゲムシやボルボックスも増殖していましたので、増殖する微小生物の対象の広がりを感じます。
⑤このような微小生物の増殖は、食物連鎖ピラミッドの低位の生物を増加させて、上位の生物のエサとして大変意味があると思われます。また、葉緑体を持っている上記のミドリムシ等の3種の微小生物は、光合成を行ないますので、水中のCO2の固定化にも少し役立つのではないかと思います。つまり、将来性としては、生物多様性向上と温室効果ガス削減につながります。このような自然界にある田んぼと太陽光と微小生物等によって、持続可能な仕組みを作れないかと思ったりしています。
皆様方のアイディアやご提案を頂きたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。